資本主義分析-6

・かき氷屋 さんAの-4からの続きだ。

いよいよ、これまでなかった資本主義生産様式が、かき氷屋 さんAによって採用されることになる。

 

中世の市民社会モデルの手工業者と商人とからなる単純再生産交換経済を基礎とする均衡社会は、かき氷屋さん Aのかき氷機の発案と、これをカンナ製造職人即ち鍛冶屋に製造発注したことから社会経済システムは不均衡化の時代に突入するのだ。しかしこれはモデルであっても可能な、自然な進歩の結果でしかなく必然性があったのだ。

 

・復習だ。

かき氷機前の3店のかき氷店のカンナ式かき氷機使用での生産販売は、

カンナ式のカンナは、製造費が10000円で、1000杯の使用で滅失する為、10000/1000=10円の減耗費。

労賃は8000円/日必要。で時給=1000円。

カンナ労働だと、5杯/1時間が生産量。

 

90円原料費+10円減耗費+200円労賃の単価製造で、

8時間労働で40杯生産が可能。

8時間=1日で、

3600円原料費+400円減耗費+8000円人件費

=12000円の経費回収には、300円/杯で販売。

これで労賃8000円が得られて自己再生産できる。

店舗労働が継続できる。

これがケネーの不生産階級の生産活動の姿だ。

 

かき氷機投入で、

カンナ歯を4枚で回転労働にすることで、8倍の生産力を得ることが可能に。5杯×8=40杯/1時間

かき氷機製造費は、100000円、1000杯の使用で滅失するので、100000/1000=100円の減耗費を要する。

労賃は、時給1000円。

 

90円原料費+100円減耗費+25円労賃の単価製造で、8時間労働で320杯生産に。

かき氷機投入で40杯生産するには、

3600円原料費+4000円減耗費+1000円人件費

=8600円の経費、8600/40=215円

だが、1日なら8時間労働で、

5×8×8×300=96000円の売上だが、

3600×8+4000×8=60800円は、支払い経費である。

96000ー60800=35200が労賃となる。

この段階では、より豊かな市民でしかなく、消費材を豊富に購入することで、豊かな生活を楽しめる条件が得られた自営市民に格上げされた、というだけだ。

ただし、この前提は、215円の製造単価で300円で売れる場合だが、もともと、かき氷屋の維持費は、8000円/日の労賃回収であり、3店で経営していたのだからこれで成り立っていたことになる。この額での需要はあったのだから、カンナがかき氷機に変わろうと、それは買う側からの問題にはならない。

ただし、生産量が増えることで、潜在需要がなければ、上記の計算は成り立たない。

日産40杯の生産で社会的均衡を保とうとすれば、

40×90円原料費+40×100円減耗費+40×25円人件費

=3600+4000+1000=8600

300円×40杯=12000、12000ー8600=3400円/1時間

労賃は、不足だ。過剰投資だが現実は、生産スピードの早さで、他の2店に並ぶ客を引き寄せて優先販売できるのだが、すると他店は廃業するしかない。

潜在需要がなければ、結果は同じである。

仮に潜在需要がなく、他店が廃業すると、

40杯×3=120杯が総需要、

120×300ー(120×90+120×100)=13200円、の労賃は有難いが、資本主義化はできないし、廃業で2失業者となる。

しかし、鍛冶屋は、対かき氷屋には、

40×3=120×10000/1000=1200円/日、分のカンナ製造需要があったが、これが、

40×2=80×10000/1000=800円と、40×100000/1000

=4000円の合計=4800円の製造需要となり、

いずれは120×100000/1000=12000円需要になる。

すると、鍛冶屋は12000ー1200=10800円の製造需要増となるので、廃業かき氷店の1人は、鍛冶屋に転業が可能、となる。

仮に、かき氷潜在需要が十分にあれば、

40×8×100000/1000=32000円/日、2人の廃業失業者を吸収でき、更に原料増に伴う、

(320ー120)×90=1800円/日の合計で33800円の労働需要が生じる。原料増はさておき、かき氷機製造需要は、場合により、既存鍛冶屋への労働者雇用に伴う資本主義生産化も可能にする、ということだ。

 

 A店のかき氷機導入での影響は、社会的均衡を崩す悪弊を撒き散らすことになる場合もあるが、生産の高度化と労働需要の変化、場合により、かき氷機製造の資本主義生産化をもたらす可能性もある。

閉店に追い込まれ、自由市民から労働者階級になった失業者は、かき氷機製造という形で、かき氷販売に間接的に関わった仕事にシフトした、ということになるのだ。

 

・独占販売する かき氷機生産するA店、で新たな均衡で落ち着くのか?というと潜在需要との問題もあるが、同じくかき氷機を導入したC店が新規参入することもありうるのだ。

理由は、215円の製造費で300円という、或いは独占販売による独占価格を形成し、350円とかで販売する権利があったからである。

300円という価格は、カンナ製造の市民社会の自営業者の労働再生産費用としての価格であり、現在は215円の生産コストである。85円の利益を求めての新規参入の隙があるのだ。

この場合は、更なる潜在需要があれば、85円の利幅を維持するのが可能だが、潜在需要の限界による値下げ競争での販売競争による死闘となる。

ここで、新種のガソリンを燃料エネルギーとする発電機による自動かき氷機ができたり、出来た氷をセルフサービスでカップに受けてもらえば、監視作業だけで済む生産工程が得られるのだ。

こうして、労働需要自体が生産手段としての労働時間を削減する生産材生産労働へと形を変えて、生産材生産の機械化へと更に進むのである。

 

ここで、話を戻して、

かき氷屋さん Aの予期せぬ?労賃がかき氷機導入で35200円得られたが、このうち8000円は生活費だから27200円を得た。これを資本として、もう一台かき氷機を導入し、労働者を2人雇用し、2台を稼働させる資本組成とすると、

90原料+200減耗費+25円労賃=215円投資で8時間労働させて、320杯×2=640杯生産すると、54600円の剰余価値が生産できる。要は需要次第だ。

お金がお金を産み、怖いのは新規参入者と需要の限界である。

かき氷機はフル回転し消耗が激しくなるので、かき氷機生産工場にも投資枠を広げる。機械生産だ。すると、かき氷機以外でも機械生産材需要は高まるので、機械工業生産により、消費材生産業種の機械化により、またその生産に資本主義生産で応えれば

全産業が資本主義生産での生産様式となり、生産物価格は下がり、実質賃金は上がり、資本主義社会が出来上がる。チェーンストアが増えるが、人手や接客業など、機械化の及びにくい範囲を除いて資本主義生産が行き渡ると、生産材生産需要は有限であり、必ず壁に突き当たる。

貨幣資本として回収された資金に、生産材投資先が見つからず、金融資本主義が実態経済で働かなくなるのだ。

 

しかし、かき氷機導入により、確かに資本主義は芽生えることは可能であれば、それ以外の業種のどこからでも資本主義化は必然として生まれ育つ、ということはわかるのだ。