マルクス主義経済学-3

 

マルクスの当初の資本主義観察は、ミクロの工場製品生産と、その中での剰余価値生産に焦点が当たっており、階級闘争の必然性を導いたが、その後の資本主義経済発展を予測できるものではなかった。

 

マクロ経済面での分析や、ケネーの言う不生産階級が、徐々に資本主義的工場生産に置き換わっていく歴史的考察から、将来の国体や権力構造の変化パターンのモデルを描けてはいない。

 

・前々回のー1、で生産階級=農業生産で、余剰生産物が得られる農本経済システムを「ケネーの経済表範式モデル」で見ることができる。

ここでは、支配階級への納税分20と、10の利子又は地代又は固定資産減耗補充という内部留保が、余剰生産され、原前払い=資本が形成補充されており、農本社会で生産階級(農業生産)だけが資本形成による余剰生産物が得られている、言い方を変えるなら、農業主体の農業に部分資本主義が萌芽しているのがわかる。また、国体もこれを基盤に作られ、士農工商の世界が得られている。

 

・前回ー2、では不生産階級即ち、工、商、階層が単に余剰生産物のない単純再生産システムであったものが、工場生産による機械導入と人減らしにより余剰生産物を産み出し、資本形成=固定資産形成されることで資本主義生産に移行し、生産階級=農業との区分の必要がなくなることで、残ったのは支配階級と、労働者階級に二分化されるように発展することがわかった。

すると、士農工商の国体システムではなく、余剰生産物を生産する新生産階級(=生産階級と不生産階級)とそこから余剰生産物を受け取る新支配階級の2階級の世界に移行する。

この社会でも、不生産階級例えば零細自営業などは残り、必ずしも2階級のみにはならないし、折角?資本主義生産できていても剰余価値生産できないレベルになれば、個別の企業も新不生産階級に逆戻りになりうる。また、現実社会では一定の層の不生産企業群が並行して存在する。

この場合、新生産階級内には個別の産業資本家が存在しており、ここの余剰生産物による納税で支配階級が維持されるが、国境や領地の維持は農本社会に対応するものであり、そのウエイトは下がり、国民の納税力が主流の価値観となる。

 

・さて本題に移ろう。-3は、ミクロ分析としてのマルクスの、生産表式と呼ぼう下記の表式のマクロ的考察である。

GーW(pm+A)ーPーW'ーG'

で、貨幣資本は、マルクスは記号的意味としての現代貨幣ではなく、絶対的に価値を持つ、金(きん)という商品貨幣を指しているはずだ。従って生産組成即ち貨幣資本を生産資本=商品、と等価交換する。

この商品は消費するのではあるが、労働力を再生産する為の生活消費材としてではなく、あくまで資本主義生産のための生産財としての消費材なのだ。

これは、ミクロのこの表式の世界以外の誰かが生産した商品を貨幣資本で交換入手することになる。

pmは原材料で、その価格は、この表式以外に工場生産が無ければ、職人生産による生産物だから

 GーW1ーW2のWである。

W1を例えば職人労賃Wa、原料がWpmとすると、W2なる製品の価値は、W2=Wa+Wpmの価値物である。

木工家具作りで考えると、乾燥材木一本から板をとる作業を職人がやり、一本の材木購入費+加工労賃=板製品総額が、決まる。でその板製品を原料仕入れするところから始めよう。

 

その板で家具工場をマルクスの表式で、家具職人生産に対抗して工場で資本主義的家具生産を導入する、と考える。

まず、現状では不生産階級の職人生産に頼った生産が全てで、総数48人の家具職人がいる社会で、需要が満たされた社会があり、単純再生産が行われていたとする。

生産力は、24の原料板で48人で72の価値の家具を家具職人が一年間で作っていた世界を、分業により、その半数を資本主義工場生産で置きかえよう、となったとする。

職人生産では年間で、12の原料板で24人がかりで36の家具が作られる。彼らは安く価格を無視できる工具を今まで通り使っていた。

残りの半数、24人のうち、12人で12の原材料板を

電動の丸ノコや組立機械の固定資産減耗2と動力エネルギーの電気代4、合わせて6の不変資本の付加で36の価値の家具を1年間で作ったとする。

12人は失業者となったが、発電の職と、産業機械生産の職に移転してそれぞれの増産を支えた。

家具職人は36の売上貨幣で、生活費賃金24、原料代12を払ってまた再生産循環できる。

一方で、資本主義家具生産工場は、36の売上貨幣を生活費賃金に12、電気代に4、機械の減耗費又はリース代に2、原料代に12、合わせて30で再生産循環できるので、6の剰余価値が貨幣資本として資本家ものとに入いる。

これを階級内の支配階級として外の市場で消費材を購入して豊かに暮らすもよし=支配階級、大型工場や新鋭機械設備に投資して、生産量を上げて=資本主義生産の拡大に供するのもよし、である。

資本家は6の投資又は消費又は貯蓄が自由に選択できるのだ。

この状態での不生産階級から資本主義工場生産の導入によるマクロ的変化は何だろう?

社会全体では何がどう変化したのだろうか?

生産人口に変化無ければ、社会的には24+12=36人で、72の家具を生産したことになる。

 資本家の剰余価値の貨幣資本6、と失業家具職人12。が結果だ。また、資本家は、残りの半分の職人生産も工場生産に置き換えたいから、12を雇用し12を失業者にしたいはずだ。その為には、雇用給与を少しあげること、か工場生産物の販売価格を少し下げて剰余価値の取り分を減らすことが考えられる。

社会的には、機械生産とエネルギー生産が雇用の受け皿となる。

 

家具職人時代に、職人の中から剰余価値欲しさでA社が資本主義生産化し、残りのシェアも取ろうとして独占企業を目指す図式だが、普通はB社が競合として立ち上がり、シェア競争の為に安売り戦を行う。その結果は、例えば3程度の剰余価値カルテル状態になる。

価格低下は、消費者にとっては賃金の実質上昇となり、生産者にとっては生産財仕入れ原料の低下となる。少ない人口で多様な物が生産され、マクロ的には豊かになるのだ。

 

・だいぶ横道に逸れたが、家具の職人生産=不生産階級生産=非剰余価値生産が工場生産=資本主義的生産様式の採用=剰余価値生産で取って代わるのに、対社会に与える影響を考えてみると、

• ★結論は、

産業予備軍=失業者の部分産出、剰余価値の産出と

生産機械の投入、生産機械エネルギーの投入、とがこの、ミクロの家具生産工程での対外収支である。

失業者は生産機械やエネルギーなどの投入の生産活動で吸収されるし、剰余価値もその生産活動に投資される。動輪がより早く回り、自然ではなく機械の助けにより労働生産性が上がり生産力が向上してコストが下がり資源の消費は上がる。