経済を考える6-6

6-5で、イギリスの地政学的優位性とユダヤ人の流入が、近代資本主義の爆発的発展をもたらしたとは考えているが、話の組み立てがやや乱暴なので、その前段階を丁寧に深めたい。

自然な流れとしての、農本社会に内包する要素の中からの成長による小規模な資本主義化のことだ。

循環経済、単純再生産経済から拡大再生産への変化の中に資本主義の成長がどう関わるかの考察だ。農業生産力は、開墾や農機具などの発達で高まるが、すると何が起こるのか、だ。

 

不生産階級を深掘りして考えよう。彼らは農地周辺ではなく、城下に都市を形成する階層である。

都市の市民には自給自足の生活はできないから、自らの労働を通じて、発注者からの支払いを受けて生活している。城下町になるのは、主な発注者が支配階級だからで、城造りや補修の大工、貴金属加工や、美術品関係、行政面では、軍、警察、裁判所、徴税人、生活面では、雇用教育者、仕立て屋、料理人、庭師、洗濯屋、靴屋、などなど。

もともと、余剰生産物は支配階級を経て直接消費され、また派生してその労働者達都市市民の為の間接的消費がある。その意味では支配階級の存在意義は、余剰生産物を消費しつつ、残りの余剰生産物を不生産階級の中間消費財原料と食糧に利用しつつ支配体制を充実させる。

農産物の余剰生産物は、支配階級と、不生産階級の食糧と中間消費財を賄うのだから、この2階級の発展を促す。結果、都市の不生産階級の人口増、軍を始め支配階級の人口増、不生産階級の原料増となる。生産階級はというと、これに対応するために人口増があるが、一方で不生産階級製造による機械化のような生産性向上手段の導入で人口過多となり、不生産階級への人口移動の人口供給源となる。

ロビンソンクルーソーが、泳いで魚を突いていたのが、熟練度が上がると余剰時間が生まれ、釣竿や漁網、船を作り、更に余剰時間が増す、というのと同じである。

また。例えば、縫製工房からの服であろうと、仕立て屋からの服であろうと、労働の中身が分業化のレベルが異なるが、城主が仕立て屋を呼びつけてオーダーメードするか、この仕事を都市住民に広げ、縫製工房で既製服プレタポルテで作るかは、発注者、需要者の違いによる。都市人口が増えればプレタポルテが大きな工場生産となり、都市の外周に工場ができることに。支配階級の非食品分野の消費余力が増えると、不生産階級が増えていく。

 

要は、生産階級の農業生産力が増せば、ケネー範式の図式で、20の税金が、30に増えたとして、食糧は、支配階級の自家消費に限界があり、振り分けが10から増して、20以下が非食品で消費される。この需要の担い手は不生産階級であり、不生産階級の人口が増えても、食糧に事欠かない。不生産階級の人口増加の供給源は機械化農業により溢れた農村人口からの流入、現代中国の農民工や戦後日本の出稼ぎ労働者である。または、域外から流入する。

個人営業のサービス業、要は支配階級の召使い業なら、剰余は産まれず、食糧プラスアルファの生活費と引換に支配階級の発注で仕事が生まれるだけだが、都市の人口増加により、発注者が都市及び農民の需要を工場生産でまかなうようになるなら、労働者と経営者に分離した生産体制で、労働者には最低生活を保障する賃金の支払いで済ませれば、剰余、即ち資本が経営者に生まれる。が、工場の規模を拡大して剰余を目的に工場生産すると、いずれ需要は限られるから、限界に達する。原前払い即ち固定資産減耗で労働者の雇用に伴う賃金が抑えられば、利潤はさらに上がるが、マクロ的には発注者が減る。

階級問わず人口増加と、輸出による発注者需要が必要になり続けるから、市場の拡大が求められ続けることになるが、いずれは拡大再生産は単純再生産へと移動する。

範式では、生産階級の原前払い10、支配階級の非食品消費10、と同等のサポートを不生産階級は行なっていて、静止状態にあるが、どちらがメインなのか、どうバランスが変化するのか否かを考察しなければならない。

支配階級の非食品消費増加が、不生産階級を育てるが、この増加は生産階級の余剰生産物増加によるものなので、主は生産階級の原前払い増加による生産増からの税収増である。

余剰生産物が少ない時は、支配階級は食糧収奪が所得のほとんどで、それを超えたぶんのの食糧で召使いを賄った。食糧生産がある程度増産されて範式段階に至り、更に増産されれば生産階級から不生産階級への人口移動を促し、不生産階級が年前払いだけでなく原前払いまで資本を蓄積できた時が自営業又はギルドから工場生産となり、資本主義生産循環が得られると、生産階級並みのシステムとなり、不生産階級は生産階級となり納税も可能となる。最終消費の対象も支配階級を含む生産階級、不生産階級自身の需要を対象とする生産を行えることになる。

範式は、それ自体農業国で資本主義生産が行われる前段階の断面図、ということになる。