経済のポイント-6

「閉鎖経済での集団的経済活動」をこの章の以降で深めてみよう。

島国日本での平和的鎖国状態と考えれば良い。

 

ところで日本の人口は、鎌倉幕府始めで750万人、江戸幕府始めで1200万人、江戸幕府終わりで3300万人、第2次大戦終戦時で7200万人、戦後のピークは2008年の12808万人。ここを境に下降に向かっている。

 

江戸時代は平和で、徳川幕府による封建的農本主義で、ケネーの言う経済表範式があてはまっている。生産階級、支配階級、不生産階級が、日本では士農工商で農業生産の米を藩が収奪し分配する経済システムである。当時のフランスと同様である。

 

全国の石高分配では全体で3000万石、うち徳川が800万石の最大支配階級であり国権を代表支配する藩連合を徳川が束ねた形の国体であった。

 

明治になり不生産階級=工商階級による資本主義システムが輸入され経済発展して人口は倍加し、敗戦後の戦後復興で更に倍近くまで伸びたが、その復興経済に朝鮮戦争ベトナム戦争特需があり、巨大な生産手段投資が支えられ、その生産力でブレトン・ウッズ体制の固定為替での輸出が続き、主にアメリカからの所得移転が進み世界第2の経済大国に成長した。

しかし、アメリカからの変動相場制要求により超円高に振れバブル化しそのバブルが崩壊し、時間を経て衰退に向かった。

冷戦崩壊により、日本の位置は冷戦敗戦国の中国に強い復興需要があり、日本の戦後復興の地位をほぼそのまま中国が譲り受けることになった。

 

グローバリズムの勃興で日本は資本輸出国の側になり、中国への生産財資本投下競争への積極参加により、国内総生産が単純再生産的足踏みに留まり、国民総生産としてのみ維持する国民経済となり、現在も国内生産は停止中である。

 

さて本題に移る。

・集団社会とはいえ、集団での生産は勿論集団の需要を満たす為にその分を生産するのであるが、

生産力が低い間は、余剰生産物どころか不足する生産物の奪い合いにより、最終的に分配を受けられなかった者が淘汰される弱肉強食社会となる。

人口も自然に増えるのではない、淘汰されるのだ。

しかし、農機具の進歩や農業技術の進歩により、平和が続けば次第に農業生産力があがる。

ある時点で人口需要を超えた生産物が得られる。

これが既存の農業生産人口を支えるだけでなく、超えた分は、農業生産人口を増加させることにより、消費増となり余剰生産物を失うモーメント力が働く。

もともと、生産力不足の時にも分配抗争により、より多くの分配を得て生存を維持する力が働き、その秩序、即ち生産階級と支配階級との抗争は継続してきた。

横領されると食糧不足となる生産階級は、常に強制的所得移転=税収奪には抵抗するわけで、それを暴力で抑え込む支配階級のシステムが常に機能していたはずである。上手くできなければ新たな支配階級に取って代わられるだけだったはずだ。

 

支配階級が存在しないのは、南洋の孤島とかの自然の食糧が豊富で気候が温和、分配が見える程度の少人数の地域社会に限定されるはずだ。

 

そもそも閉鎖経済圏自体が陸続きなら、他の経済圏からの脅威には常にさらされるわけで、支配階級も安穏としておれず、富国強兵を迫られるはずだ。

したがって、生産力の向上と税収の拡大という相反する課題に取り組み、生産階級は生かさず殺さず、農閑期には兵士として雇用することにもなる。

膨大な官僚機構や職業軍人、兵器や武具の生産力を常に必要としていたはずだ。

 

超過生産分を所得移転すれば、農業人口は静止し、維持はされるが、一方で所得移転を受けた非生産階級人口は増加することになる。支配階級の直接雇用の公務員と非農業生産階級である不生産階級である。

その人口総量は頂点に君臨するのが支配階級なので少数であり、また過剰生産力も当初は大きくないので当たり前であるのだが、過剰分を収奪した農産物移転所得は消費しきれず、この消費の受け皿として支配階級の召使い労働を行う不生産階級人口を増加させ、またサービス労働させることで、支配階級の需要をより多く満たすことができる仕組みである。

常勤的には、官吏や職業軍人や徴税人や警察を国家の礎とし、あとは非常勤として消費財やサービス生産する召使いや民間の不生産階級を城下町に集めることになる。

 

彼ら不生産階級は城下町で支配階級の所有する余剰農業生産物と引き換えに支配階級の需要する労働を行うのだ。

それは、城の建築に始まる土木や建築、同作業員、内装、装飾具、美術品、服、等の加工生産労働や、調理、理美容、清掃等のサービス労働である。

そこから溢れると、乞食、売春、盗賊が増え、失業者の成れの果てであり、これらが一定数いる、ということは過剰な労働力人口にあり、彼らは支配階級同様に支配階級からの余剰生産物の間接的流入により生存維持されたり絶滅したりする調節弁の役割を果たす。

消費財は、原料を採取、運搬移動させたものを目的物に加工労働するものであり、原料採取労働所得分にも分配されつつ加工労働は行なわれ、その総労働所得分を支配階級のもつ余剰農産物と交換するシステムである。

 

しかし、直接雇用する官僚や、受発注相手となる不生産階級の量と質は、全ては過剰生産物の量に関わっているが、過剰に収奪すれば反乱が起きるし、生産力自体が落ちる。逃散など生産階級の他の経済圏への脱走も導く。

したがって生産力を上げるには、人力に依存するのではなく、農機具や倉庫、運搬具、肥料や防虫害予防、暦作り、などの後半の農業技術に対する投資により多くの不生産階級を投下することで増産が図られ、また経済圏の拡大戦争による領地と領民を増やすことで移転所得=税収奪量を増やすことになる。

 

この仕組み、国体は政治力であり、経済力とは無縁である。これが実態と知った上で、グローバリズムの成れの果てでもある、閉鎖経済圏について考察するしかない。だからこれは単に現存しない政治権力の及ばない夢想そしてのモデルではあるが、グローバリズムもいずれは行き着くところまで行き、このモデルに到達する、との理解で次章で検討する。