新冷戦の登場=グローバリズムの終焉

・冷戦は、ソ連を盟主とした社会主義国陣営と、アメリカを盟主とした資本主義陣営との間で第2次世界大戦後、約半世紀にわたって行われ、1990年にソ連崩壊で終焉した。

   その特徴は、陣営内で安全保障=軍事も経済圏も共有する陣営間でそれぞれ「壁」「境界」を設けることでの陣地拡大戦を境界で繰り広げるものであった。

 

・第2次世界大戦の終了は、戦勝国ソ連と中国の社会主義をも含んで、米英仏との五カ国で拒否権をもち常任理事会を構成する国連システムで統治した為、国連は冷戦の経過措置としての機能に留まり、いずれは雌雄を決することになるが、核優位をもつアメリカは、朝鮮戦争当時は国連軍として参入しているので、中国、ソ連は拒否権発動していない力関係がわかる。

 

アジアは日本の敗北により、ヨーロッパの植民地支配の再復活が可能となったし、ドイツ周辺も旧資本主義の復活が目指されたが、戦後処理はソ連の東ヨーロッパ、ベルリンの半分が社会主義圏に組み入れられた。

一方アジアはヨーロッパによる旧植民地復活を拒否する民族独立闘争が社会主義的様相を一部伴った独立戦争として冷戦期間も境界で継続した。

17度、38度線と国内で経済圏を分割統治したのであるからイデオロギーグローバリズムに国の意思を超えて存在してしのぎを削ったことになる

 

大戦でヨーロッパは消耗し所得がアメリカに移転した。即ち英、仏、蘭、勢ではアジアの植民地を再支配するより、自国の復興がやっとであった。

 

戦後処理は、当初朝鮮だけでなく日本も北海道、東北をソ連、関東、中部、近畿をアメリカ、中国四国九州をイギリスと中国、との分割統治案があったが、日本を原爆で単独占領したアメリカによりアジアの戦後の再支配にはアメリカの意向が強く働いた。

結果、日本の分割統治は、東欧のルーマニアハンガリーソ連の統治とすることと引き換えにアメリカに委ねられた。

が、アメリカ除き、どこも自国の復興が精一杯、が正直なところだったろう。

 

・第2次大戦は、植民地再分割覇権戦争だった第1次大戦を通じて、ヨーロッパとその植民地の再分割覇権闘争であり、この戦争で死の商人となり、戦場化を免れたアメリカに生産所得移転が起こり、戦後はイギリスからアメリカに覇権が平和的に移行した。

 

戦後の世界のGDPの1/2はアメリカ1国であった。

 

アメリカは国内市場だけでは決定的に需要不足となる生産力を手に入れていたが、それはもろ刃の剣でもあり、戦後の過剰生産構造と復員兵による失業者増が課題となった。

現在の中国は別な意味で過剰生産構造になり、人民解放軍は失業者の受け皿ではある。

 

生産力とは所得を生めば消費支出力そのものである。生産過剰は、労働所得を生めないのだ。

 

大戦後のアメリカは、既に武器を売る相手も、物資を売る相手もいないのである。第1次世界大戦の終結時は、巨大な過大投資と販路の喪失がアメリカ発の大恐慌をもたらし、結果として資本主義陣営内発の第2次大戦を必要としたのだ。

アメリカは、孤立主義であり反戦の意思が強かった。これにより、ドイツはじめファシズムの台頭を許したし、アジアでは自国で忙しいヨーロッパの植民地支配にまで手が及ばず、日本の拡張を許した。

 

2次大戦後も経済規模の縮小か、経済圏の拡大か、の選択が迫られ、みずからソ連経済圏の拡大=社会主義国の拡大阻止とドイツや日本の敗戦資本主義国の非覇権的従属的復興、によるアメリカ経済圏の拡大の道を当然に選んだ。

 

しかし、それを阻害したのはアジアの民族独立運動であった。また、没落ヨーロッパの対戦前の植民地の独立社会主義化阻止の為のヨーロッパ勢支配地の代理戦争、直接参加でアメリカの生産力は維持された。

 

アメリカの世界経済への経済圏覇権の維持拡大の為にはは、冷戦を通じた経済圏覇権争奪闘争がアメリカの主要戦略となった。

これを支えた経済規模は、国際的なドル基軸通貨、法を体系化してイギリスと交代して世界経済の支配へと発展させることも忘れていない。世界自由化主義経済圏を支配しながら、独立社会主義系アジアを軍事的に叩くことで冷戦を有利にしようとした。

 

ドイツ、ヨーロッパの戦後復興と日本の戦後復興需要と、アジアや中南米の独立の弾圧戦争がアメリカの軍事需要を作ってきたのだ。

 

総括するならば、ソ連を主敵とし、その為には中国共産党とも強調するソ連打倒冷戦の上に世界経済圏支配=世界基軸通貨ドル圏を拡大することが戦後の主要戦略であったのだ。まずはソ連以外をドル圏にすることだ。

ベトナムでは、戦争ではアメリカはベトナムには勝てなかったが、現在ベトナムはドルがドンとともに流通する。ベトナムは為替の自由化に応じている為、既にアメリカの経済圏にシフトしている。中国の覇権主義に対する防衛的措置でもある。

もし、ドルが流通貨幣としてドンの価値を失うことになるならば、ベトナム労働党の政治権力のみが残ることになり、ユーロ圏のドイツ以外の国の状況に近くなる。主権は残すが経済圏はアメリカドル支配圏に従属する。

現代中国は同様であるが、人民元はドルペッグの元で許されてるに過ぎないのであるが、独自の野心を持ちはじめた。為替自由化に応ずるアメリカの揺さぶりに応ずれば大人しくならざるを得ないだろう。

 

・冷戦の過程で、即ちキューバ危機、朝鮮戦争ベトナム戦争があったが、一方では、日本とドイツは復興し、アメリカからの所得移転が進み、逆にアメリカ経済は戦費増大で危機に至る。

中国への懐柔政策、日本たたき、を経て軍拡競争でソ連を挑発し、結果はボロボロになりながらもソ連は自滅破綻し冷戦は崩壊した。

 

戦略的脅威は日本、ドイツ、となった80年代を経て90年のソ連崩壊にようやく到達した。

冷戦後はドイツはユーロ圏戦略をとり、日本はアメリカの圧力で所得移転は衰退した。

日本の台頭を抑えることに成功し、ユーロ圏潰しが目的となった。ユーロ圏は市場を中国に求めることになった。

 

中国は、アメリカを先頭とする投資資金、日本とドイツによる技術援助により資本主義経済圏の一員として復興し隆盛を得た。

アメリカの中国育成投資による日独の成長阻害作戦でもあった。この間ソ連IMF傘下にして骨抜きにした。

ドイツ、日本の対抗勢力であり、投資先を受け入れて復興目指し、世界覇権を目指す中国共産党は国家資本主義と化した。

これには冷戦終了によるソ連圏からの解放による帰属経済圏の喪失による中国共産党の自信喪失と絶望感、が大きく作用したのだ。もう社会主義では無理と悟ったのだろう。

 

・中国は、多数の奴隷国民を抱え、日本とドイツの技術とアメリカの資本投資を受け入れて世界の工場を作り、アメリカの支配する国際市場で製品を売りまくり、所得を中国共産党幹部が収奪する国家資本主義として勢力を拡大、世界レベル=グローバリズムを市場規模とする生産力投資を経て生産過剰となり、ついに一帯一路を含む新植民地づくりを進める覇権主義帝国主義となった。

ちなみに奴隷労働の一端は、沿岸部の工場労働者に若いウイグル人を大量に移動させる。長く止まることに重税を課す。で、ウイグルを高齢過疎化させ抵抗力を奪い漢民族を移民させる、工場ではオモチャ、衣料などの輸出産業でタコ部屋で食料は保証、囚人状態である。徹底した搾取が行われ、少数異民族は暴動が後を絶たない。

ウイグル人は、現在労働改造所に大量に移され、仕事は漢族が代理する、中国の低価格生産は、こうした無限の労働資源によって行われている。

 

中国は、まずはアメリカに追いつくまではアメリカとの対立は避け、2国支配に、その後はアメリカに代わり世界支配を目指すグローバリズムの独裁型の国家資本主義の落とし子となった。

中国はアンチグローバリズムではない。EUと中国こそが米英に代わってグローバリズムの旗手となっている。

日本は、牧歌的、倫理的に周回遅れでグローバリズムのままである。鎖国から開国へ、の視点である。

 

アメリカから中国への所得移転が中国の奴隷労働により継続し、ここに発生する労働所得を資金源とする中国共産党のグローバル支配なる覇権主義帝国主義が登場し、顕著となり、ついに新冷戦、アンチグローバリズム時代がスタートしたのだ。

 

域内のマーケット分割も終え、規模をドイツからEUとしたドイツは、技術だけでなく中国を市場とする巨大な生産力と所得も手にしているが、中国の投資市場はもはや終了し、規模縮小が迫られている。

 

アンチグローバリズムは、まずはイギリスのブレグジットEU離脱に始まり、アメリカの保護主義の台頭、ヨーロッパの保護主義政党の台頭、と新冷戦のイズムが台頭拡大している。

世界経済の現在の基本は、労働所得が中国に偏り、しかも中国投資が過剰生産になっていることだ。

従って世界経済がデフレ化するので、各国の労働所得は拡大しない。中間層的な先進国労働者は、強い製造業を国内に有しなければ、輸入品の販売にしか仕事もなくその労働所得は限られている。

今必要なのは、中国にある生産手段を大幅に縮小して過剰生産力をなくすことでしかない。ひとつは中国国内での破壊行為である。または販路を広げる輸出先を減らすことにより、国内に矛盾を押し込むことである。

各国の労働所得を中国の奴隷労働と中国共産党国家=帝国主義、から奪い戻すことである。

日本で言えば、中国投資をやめて、生産工場を国内に戻すことで、労働所得を奪い返すことが求められる。メイドインジャパンの復活である。

鎖国じみてはいるが、エネルギーや食糧は輸入せざるを得ず、その為の輸出産業は必要であることは当然だろう。

一帯一路か、覇権主義阻止か、が迫られている。

後者なら、大不況を中国が国内解決しなくてはならない。元々投資回収を超えた投資が行われたのだからその悲惨さは計り知れない。

 

社会主義圏の崩壊、グローバリズム、ときて一巡して中国をはじめ資本主義国家間の覇権闘争に戻ったたわけである。

この新冷戦が旧冷戦と決定的に異なるのは、同一経済圏内=グローバリズム内での覇権闘争である。

当時のイギリス支配に対する後発組のドイツや日本の挑戦と類似している。

第1次大戦前夜の様相と共通するのだ。

 

万一、冷戦ではなく米中が軍事的に直接対決すれば、日本やドイツに漁夫の利がでてくるが、これを回避する為、中東、南米、アフリカなどの経済圏争奪戦が当面は繰り広げられる。

 

中国は、発展途上国に対して、高利の借款、インフラの為の鉄、コンクリートの輸出販売、作業労働者=国内失業者の輸出を繰り返しながら、租借地を抑える方式=一帯一路が行われるが、貸し付けるのはドル建てであり、ドル不足をきたすアキレス腱をもつ。

AIIBも資本提供国がいない。投資してください!が中国のニーズである。

アメリカはここを狙う。アメリカは中国投資も止めはじめた。焦げ付くことが明らかな無謀な投資だから。

しかし、中国はこれをしなければ、重厚長大産業の多額の借金を残して工場の稼働を落とし、固定資産を除却損し、借金の返済だけを残す、バブル崩壊となる。

外貨保持を裏付けとした内陸投資の資金は底をつき投資課題が国内にはなく、例えば30億人もの住宅や地下鉄を羊しかいないど田舎にも作り、回収見込みない投資として経済を活性化したその手段が尽きたからこその一帯一路である。

地方と企業は膨大な借金を抱える投資をGDP成長司令を出す党中央に迎合する投資資本主義を進め、融資が国内でも止まったのだ。

3700兆円の負債を抱えている。奴隷労働だったから所得は低く、消費は限界である。投資と輸出、の両方をアメリカが絞りはじめたのだ。

 

バブルを自ら崩壊させて日本の道を歩むのか、軍事衝突を起こしてまで覇権めざすのか、今その岐路に立つ。

日本に3兆円の通貨スワップを申し出てきた。日本は受け入れてしまったが。資金の枯渇は明らかだ。

まあ、3兆円失って中国の日本資産を失えば済む話だが。中国の資本主義的覇権主義を支えているのは、アメリカからの経常利益と、ドルペッグ制、WTO加盟=資本主義経済圏下の輸出である。

貿易戦争がアメリカにより仕掛けられて、金融貸付を拒否され、ドルペッグ制でありながら覇権を目指さざるを得ない状況に追い込まれた。

 

バブルをみずから崩壊し日本のように自爆する道か、ドルから切り離した中国元を基軸通貨とする経済圏を軍事的優位の元に築くか、二者択一が迫られている。これはまだ先にしかできないので、絶妙のタイミングでアメリカは攻勢をしかけた。

 

二者とも、習近平の崩壊になるのではないか。

問題は、為替を自由化するかどうかだが、自由化して共産党の存在を形として残すのか、共産党も崩壊するのか、その選択権は中国共産党自身が選ぶことになるが、問題はこのプロセスでの日本の関わり方だが、財界主導であることから、中国からの儲けに深く関わっている現状があり、日本は政治主導にはなれない国なので、振幅の激しい結果を受け入れるだけになるのではないか。

日本も国内需要を背景に、減税を原資とした消費好況を作りつつ、中国の二者択一のどちらにも対応できる経済構造の下地を作るべきである。

自然の脅威でもないのに、想定外として責任を逃れてなお給料を欲しがる官僚や政治家は、今この作業を始める必要がある。

中国やアメリカの市場をあてにした経済政策を変える必要があるのかもしれない。