資本主義を考える-15

・中世の絶対主義的王政の支配する農本社会では、余剰人口は、自営的安定的な不生産階級即ちその日暮らしの手工業的自営業者による都市市民を育成した。

ここにこの経済循環システムを根底から変革する資本主義生産システムが登場したのだ。

 

それは、消費材生産活動において、生産手段に道具程度から機械を使用する操作労働に変えることにより、労働時間の大幅な短縮化が機械減耗分の生産労働時間を加算してもなお総労働時間短縮が実現できたのだ。

機械導入自営業者は、余剰時間をロビンソンの場合同様もたらすのだが、そのことによって別の生産や、より豊かな消費が実現する自営業者となることもできたのだが、圧倒的な生産力増で意識的に過剰生産する事で、需要を独り占めできる武器として使う道を選択する事もできるシステムなのだ。=支配階級化の武器となる。

 

後者を選択すると、他の自営型生産を駆逐でき、需要を独り占め、即ち自立型自営業者を壊滅させる道を選ぶ利己主義的使用により、自営業者から生産所得を奪い、人間の尊厳をも奪う失業者という被支配階級に落とし込める。

豊かな自営業者として止まらずに、他の機械導入しない手工業的自営業者を失業者にまで追い込むことで生産所得を一極化、即ち資本増殖するのだ。

 

例えば地方では、商店街と大規模小売店の戦いがある。

商店街は、それ自体で日暮し的な生産所得があり何世帯もの貧しいがささやかな生活があるのだが、大規模小売店の登場でシャッター通りとなり、大規模小売店にパートとして雇用されるようになる。が、引き取られずに失業破綻する商店主もあり、社会は不安定化する。生産所得が大規模小売店に集中するむき出しの生存競争である。社会進歩も競争も必要だが、弱肉強食までは行かせない政治力がないと、ほとんどの人が資本の奴隷となることになる。

 

生産所得の一極集中による自営業者の失業者化、から雇用労働者への転身をせまるのである。

自営業者時代は、道具程度を自己所有していたので、需要側の所得との交換による生産所得は自らのものであったのが、機械導入自営業者の場合も同じで、短時間労働がロビンソンのごとくもたらされるだけなのだが、過剰生産にする事で他の自営業者から競争により生産所得を奪い、持続困難にして失業者化して、雇用労働による生産を行うと、吸収した所得の全ては、資本主義導入自営業者のものとなる。

活動域内市場が小さければすぐに壁にぶつかる。需要を独り占めにすると、資本増殖は止まる。

どういうことか?

過剰生産の必要はなくなり、競争相手がいなくなり需要側の需要分の生産量に落ち着く。

機械生産してるから、減耗分の補充生産労働時間+機械操作生産労働時間で全需要分が生産できるようになる。

この生産所得による他の産業の資本主義生産への投資がなくなると、資本家自家消費の需要が消費材消費や召使い消費による所得移転での循環構造になり、中世の絶対主義王制の消費の為の生産と生産階級への固定資産減耗補充の為の生産と変わらない状態になる。

要は、支配階級に資本家が入れ替わり、単純再生産循環社会となるので中世にもどるのだ。

ここに至ると、資本主義生産は、支配と非支配の関係性のみが残り、社会の科学技術進歩としての側面はなくなり、単に階級関係、生産所得の賃金と資本の不公平な分配制度だけが残る。

それが嫌なら、閉鎖経済圏を打破して新たな市場拡大で対応するしかない。需要の拡大である。

 

まずは。ローカル、リージョナル、ナショナル(国家)と活動規模は拡大して、その度に壁に成長が阻まれるが、それは拡大することで矛盾を先送りできる。

果てはグローバルであり、その先はない!のだ。

グローバルが行き着き、行き詰まりを見せて、新たな保護主義の勃興が始まったのが現代である。

最早、社会主義圏のような資本主義未到達地域の独自経済圏もなく、世界的に総需要を超える資本主義的生産力による生産過剰の時代になってしまったのだ。

生産を縮小して固定資産は減耗補充のみ、ここで拡大しすぎた生産手段の縮小によるたそがれか、生産手段を維持して需要を拡大する為の覇権主義化=植民地化か、が、争われる時代になっている。

前者を選択して保護貿易を認めて、貿易を必要最低限に抑えて覇権戦争を回避することが求められる。

 

過剰生産物を輸出すれば、国内の自営業者ではなく、国外の自営業者=生産所得を失業者化でき、国外市場の需要を取り込める。一旦壁は崩れて更に発展、大規模化が進む。生産工場を国内に持つ先進国と、生産所得を奪われる植民地、連邦が出来上がる。

イギリスの姿である。連邦化を資本主義生産システムで完成していった。

 

国内市場が小さければ民族主義的思想や国家主義的思想により、資本主義的生産システムを維持し拡大できるが、この道はすでに第二次世界対戦で周回遅れの中国を除いて経験している。

 

TPPではなく、相互保護主義協定の締結が21世紀の平和存続の在り方ではないか。

また、商品輸出ではなく、たそがれるものの、平和な新中世社会を作る事ではないか。

 

この期に及んで、資本主義推進拡大による壁の打開の効率は極めて悪く、日本は労働者階級の実質賃金の切り下げや、長時間労働による生産増により、結果としては需要が減りデフレ化する経済縮小に至っている。