資本主義を考える-14

・資本主義のポイントは何か。

 

ロビンソンは、モリ=道具を1時間かけて作って3時間の素潜りモリ漁で5匹の1日の必要食糧を得ることができるようになった。総労働時間は4時間。

モリを作らないで手づかみ漁やってた時は、5匹取るのに8時間もかかっていたとすると、4時間の余剰時間が得られたのだ。

この余剰時間は、ロビンソンのものである。

個人で閉鎖経済なら、生産性向上は余暇時間として現れ、いくら高度に生産性を高めても資本主義には絶対にならない。

 

他の消費材を生産したり、投網製造にして更に道具レベルを上げることで、漁業就労時間を短時間化したり、ボーっとすごしたり、自分の価値観で消費ができる時間を生産したのだ。従って、道具を製造する労働時間を1時間増やして素潜り漁をやると、8時間労働が3時間労働に削減できるのだが、1時間労働時間が取られるので、労働所得の収支は、

8時間素潜り手づかみ漁で、5匹の食糧    が

1時間モリ製造労働+5匹の食糧+4時間余剰時間

となる、ということだ。

この形は、モリ製造を投網製造に格上げして、製造時間はよりかかるが、それ以上に漁労働時間が短縮され、余剰時間が更に増加する、というパターンで道具の高度化が進むことになる。

 

・ロビンソンが何百人何千人もいる一般的社会では、

漁業、農業、各種製造業にと各産業に複数の手工業者による生産活動が行われていて、それぞれ生産活動して労働所得を得ている。

中世の絶対王政の支配階級のみは、農民の労働所得を税収奪して所得移転しているし、農民も固定資産を生産手段として動員して生産しており、減耗補充分の労働所得があるのだ。

 

生産階級、不生産階級、支配階級の総生産は、

ケネーの範式では、

各、50、20、0、合計70

所得は、30、20、20、と生産から支配に所得移転。

総消費も、30、20、20、合計70である。

 

総消費について分析してみよう。

生産階級の30は、次回生産の為に自家中間消費の20が除かれるから、固定資産減耗補充分の10、である。流通する最終消費。

支配階級の20は、全て流通する最終消費である。

不生産階級の20は、労働所得であり、流通する最終消費である。

 

流通市場には、10+20+20が所得が投入されて流通交換される。10+20は、生産階級余剰生産物であり、20は、不生産階級生産物である。

所得は債権となり、

支配階級が20の、即ち10+10の生産物と交換し消費する。

残は生産階級生産物が、20、不生産階級生産物10、だが、生産階級は不生産階級生産物を10を回収して減耗固定資産を補填する。

不生産階級は、20の生産階級生産物を得て消費する。10は食糧であり10は生産物原料なり中間消費である。

5の原料なり中間消費で5の労働を付加して、10の価値生産物として交換するのを2階級に対して行うと、10の労働所得と10の原料補填が得られるので、10の純所得で食糧を得る、という構造である。

日暮の手工業商業者である。食うために働くだけ。

 

これ以上の生産物を生産したとしても、購入する需要がないので、日暮の手工業商業者内に多少の貧富の差はできるが、総需要が一定であり、手工業レベルなので、生産構造に変化は起きない。

循環型の均衡経済システムが維持され中世状態となり安定する。

 

ここに、資本主義生産システムを導入すると、前章までの状態が起きるのだ。

即ち、機械化による大量生産で、生産過剰にして日暮の手工業者の労働所得を一極集中する。総需要は変わらない。従って手工業者は、失業者となるのだが、機械製造部門に移転できるものと、機械操作労働製造業に賃金雇用されるものと、失業者として資本家所得に依拠した労働提供するものとに分かれるのだ。

この最も大きな存在が商業であり、運輸業であり金融業である。早期に大量の投下資本を回収してシェアを高め、早く再投資する循環を生き残りをかけて各資本家が求める。また、高度に生産性の高い機械や生産システムを導入する競争になるが、この資金も所得回収労働の競争となる。

要は無理矢理過剰生産を維持しかつ大規模化して、生産所得を一極集中して、失業者を増やし、その失業者を製造業機械操作労働者、高度機械製造者、サービス労働者を増やす不均衡生産システム、が資本主義である。

 

生産物自体は、少人数の労働時間で生産は可能であり、製造業が所得を蓄積できるが、ここの雇用労働者数は機械の性能向上により、益々少なくなるから失業者と機械生産者=生産手段生産者が増加することになる。その分はサービス労働者数の増加となる。

又は、資本家所得をあてにした自家消費物生産者も含まれるが、召使いに豪奢な物を作らせるのも、手工業者から生産物を買うのも大差ない。資本家集積所得を労働所得で移転するだけだ。

こうして新たな支配階級が登場して、不生産階級は、雇用労働者となり、生存を確保することになる。

以上は、閉鎖経済圏での話で貿易が可能なら、他国の生産所得を奪って失業者を他国に押し付けることもできる。この場合は輸出を旺盛に行い、生産規模も需要が拡大するわけだから、更に生産規模も拡大できて資本家所得も増える。

これにより、原料調達力も求められ、輸出先市場の拡大も必要で、これを閉鎖経済圏で行いたいとする反抗的な国に対しては不等価交換の貿易条約を締結する為に、場合により軍事力を使う為に、工業生産力需要が飛躍的に高まる。

資本主義は、植民地や貿易を盛んにしたがるし、交易条件を良くする為に、植民地又は経済ブロック作りと軍備増強がセットになるのが特徴的である。

 

全ては、支配階級の為の手工業者集団が、資本家の所得集約の為の機械工業化、大量生産により、農業生産力を基盤とした安定収益の絶対王政より、遥かに大きな所得収益力を経済圏の広域化により得られる資本主義生産システムをとる資本家が、近代的な支配階級として交換、又は王政の象徴化により、支配階級となる。

 

貿易依存度を見てみよう。

ドイツ68%。フランス42%、ロシア36%、

中国30%、日本24%、アメリカ20%、である。

仮に国内人口が減ろうとも貿易依存度を高めて他国の需要を取り込めばデフレは回避できる。

しかしながらこの数字は、国内需要規模の小ささを示すことになり、しかも貿易摩擦を起こし、他国の生産所得を破壊する為に、保護貿易対立を生む。

結論としては、相手国の労働所得を奪わないように現地工場を作る、ことの方が揉め事は少なくなる。

ドイツはここまで外需に頼ると、中国と対立できなくなる。

やはり、自立型経済にして、前のめりの資本主義生産システムに偏らない事が肝要だと思う。