資本主義分析-2

・資本主義の本質は、資本の剰余価値生産を動機とする生産様式である。

 

・資本主義生産様式は、突然現れたシステムではない。その前史は、ケネーの経済表範式モデルからその萌芽を読み取れる。まずは歴史的考察。

 

絶対主義的封建主義時代に共通する農業生産様式が、

原前払い、という農業生産性向上の為の減耗する固定資産=生産手段と農奴労働の結合による農業生産が実現していたことにより余剰生産を可能にしたことで、この体制維持を実現したのである。

これが資本主義システムの前身である。

このことは、次の3章で深めるが。

 

・この剰余生産のためには、中間消費コストである農奴の食糧消費を最低限に抑えて剰余生産物を最大化する必要がある。絶対主義支配階級の階級による利潤を目的とした生産様式だったわけだ。

 

・この剰余生産物は、農奴を労働者とする生産階級内の生産手段、即ち原前払い、即ち固定資産との結合による高度な労働により、自然の恵みを最大限引き出して生産されるので、本来なら農奴人口増加で消えるものだ。

農奴内での非生産人口を生じさせるはずだ。

剰余生産物=農奴の中での非生産者=余剰人口増による消費で消えるものだ。

 

この分を支配階級が余剰生産物として税収奪する。

すると、生産階級は、階級内では過剰人口となり、過剰人口は生産階級から放出され、自らの食糧を生産階級に頼れなくなるのだ。

支配階級人口消費食糧を超える余剰食糧分で生きられる人口が物乞い浮浪者か死か、ではなく不生産階級として支配階級の余剰生産物との交換労働により生存できる、という構造になる。

不生産階級は食糧以外の生産労働に従事して支配階級から剰余生産物の余剰物との交換労働奉仕で生活する階級であり、生産階級の固定資産減耗を補充する、即ち丸まった金属の鎌を研いだり、農業倉庫を建築したり、農道を整備したり、ということでも生計を立てられるから、支配階級がやむなく認めた生産階級内の内部留保剰余生産物にも依拠できる、という構造になる。

 

ケネーの範式モデルの才能はすごい!

農業生産力の向上は、農業技術の蓄積により生産力を上げ、農奴数は固定するので、不生産階級を増加させることになるのだ。

この不生産階級増加、が資本主義生産の主体である労働者階級を生み出すのだ。

 

上記の構造からは、支配階級には余剰生産物税収があり、税収を減らしても生産力を高める為の生産手段増強を望まないことにより、自然発生的、熟練による技術発展か、不生産階級により良い農具生産を委託するなどの長時間の積み上げで固定資産=生産手段を増加させるしかない、ある意味低成長の安定した単純再生産社会が実現する。

均衡制度といえる中世の長い時代が続くのだ。

 

支配階級に更なる税収の野心がある場合は、領地を増やして税収である剰余生産物総量を増やす、戦争による領地収奪戦が手っ取り早いのだ。

ただし戦争は勝ち負けのリスクがあり、トータルの税収が増えるわけではない。また破壊と消耗、消費拡大を前提とするギャンブル、できれば婚姻による同盟関係で現状を確保しようともしたのであるが、戦争は残念ながら工業生産技術が高まるので、戦争と平和が繰り返されながら中世の歴史が積み上げられた。

 

こうした歴史を繰り返しながらも

 ・不生産階級と呼ばれる自営業者が徐々に増える。生活のために労働し、糧を得る。市民である。

例えば鍛冶屋、大工、洋品店、パン屋、流通業者である商人、運送屋、であり、漁師、これらの周りに、乞食、売春婦、金貸し、などが支配階級の召使い達と同居する市民として都市を形成する。

これは農地を生産の場とする農奴とは別の世界であり、間接的には余剰生産物の流通により生きる人口である。

狭い場所に沢山の雑多な人口集積地ができるのだ。

この手工業者達は、生産性の向上に努めざるを得なかったが、これを実現したのが道具の開発である。

支配階級と不生産階級の増加は、需要を拡大する。この需要を支えるのは道具使用労働即ち手工業的生産であったが、このレベルでも生産性は道具により高まったし、道具の普及により、マクロでの社会的生産力も向上していた。

 

・ここに、農業生産システムの生産手段蓄積による剰余生産物作りの非農業生産部門への適用による余剰生産物を目指す生産様式が登場した。

 

家内制手工業システムから工場生産システムへの変化である。当初は不生産階級の名の示すとおり、

 原料+加工労働=価値生産物、であり価値生産物は貨幣を媒介として販売され、他の労働生産物と交換され原料代と生活費が戻る循環構造であった。

 

生産階級だけで食糧過剰生産を可能にしたのは、原前払いという固定資産形成物=生産手段が、農業生産の生産階級の労働に活用され、この農業部分だけ、部分的な資本主義生産であったことにより余剰生産されていたのだ。

この場合は、牛馬や鋤鍬や鎌や大八車や、穀物保管倉庫や水利施設、水車作りなどが考えられる。

生産労働を応援したわけだ。

 

・資本主義は、職人による手工業生産の集合体である不生産階級、即ち剰余価値不生産階級を、生産階級、即ち剰余価値生産階級に格上げする。

これを主導したのは生産階級内の借地農経営者である。借地農経営者の資本家化が労働者増と共に資本主義の構成要素であり、この結合が資本主義生産様式を作り上げたのだ。

 

・結論は、

中世の農本社会を階級社会にしたのは、農業生産力の上昇に伴い、余剰生産物を収奪する階級があっても再生産が可能になった社会が形成され、その余剰生産物の収奪に伴い、不生産階級が生産階級から過剰人口として押し出され、支配階級と生産階級の余剰生産物との交換で、非農業生産手工業者が育ち、農業生産力が更に増すにつれ、非農業生産に生産階級の生産様式が持ち込まれることで、不生産階級が非農業生産階級となり剰余生産物を作れる階級として新たな新生産階級に成長する生産性をもたらすようになる。それは原前払い=固定資産形成=生産手段増の不生産階級生産へのシステム導入である、ということだ。

ポイントは、生産手段、である。

道具から固定資産増への歴史的進歩でもある。

これを次章で深めることにする。