経済、再生産活動-1

・ロビンソンクルーソーは、孤島で一人暮らしで、まず食糧を得て、自分の生命を維持するエネルギー源を補充しなければならない。

この為に漁業労働に従事し食糧としての魚を採る生産活動をするとき、まずは素潜り労働支出をして(枝を折って作った)モリで魚を突く。

収穫物は最終消費として食するが、食事で得たエネルギー量が生命維持に必要な収穫量に達しなければ衰弱し、経済活動は再生産循環できずに停止する。必要な量以上が得られた場合で、平均的漁獲量がエネルギー1日分程度なら、最終消費生産物を得るだけの単純再生産労働支出の繰り返しとなるが、それを超えた余剰生産ができるようになると、次の高度な生産段階に移行できる。

余剰生産力があって初めて将来発展展望が得られるわけだ。生産手段=固定資産の生産による生産力の向上が可能になるのだ。

 

・素潜りの段階から網を作る労働支出を新たに加えて、投網を作り、更に小船を作る労働支出により短時間で大漁に、という生産増活動を行う。

素潜りしながら、もう一方で網も作るのだ。労働支出はダブルとなるが、最終生産物も、魚と網になる。

次回生産活動では、投網漁労働支出と網の減耗分の労働支出で短時間漁が可能になり、小船生産活動の労働支出の余裕もできる。

 高次元になるほど、漁業活動自体に直接費やされる生産時間の短縮が得られることで、豊かになることができる。

この豊かさとは、直接対象労働時間の短縮であり、重労働苦痛の軽減であり、結果としての食糧確保以外の衣、住等の充実の為の活動時間、余暇時間、自由時間、という時間所得の取得の需要である。

 

・考えるに、網や小船は最終消費生産物ではあるが、固定資産形成であり、直接生産としての素潜り漁以外の労働支出の結果である。

ただしこれは素潜り漁に代わる漁業活動の生産性を向上する為のロビンソン自身の需要であり、生産物はロビンソンの労働支出との交換で、即ち引き換えによって得られたものだ。

固定資産即ち実物資本もロビンソンに属する所有物である。資本は労働支出の結晶化したものである。

 

・ロビンソン1人なので、自らの需要の為の労働支出との交換で得られる固定資産形成であり、賃金や資本所得などの所得との交換の必要性なしに得られるものだ。

たとえロビンソンであっても、網や小船を使っての漁は、固定資産減耗という資本支出を伴う為、短時間大量漁業の成果=漁獲量を直接漁業労働支出にのみには還元できない。この場合は、固定資産減耗補充労働支出を別途要するのである。

 

・ロビンソン1人ではない分業による社会的生産と交換による需要の充足の為には、分業による労働支出、資本支出の等価交換を必要とする。

社会需要総量は、社会生産総量と等しくなるということだ。マクロ経済である。

 

交換は、総生産で支出した労働支出と(過去労働と過去資本支出により蓄積された固定資産減耗である)資本支出の合計額と、最終生産物の合計額=需要額と等しく交換される、ということである。

 

・ただしその交換は、生産活動でまず貨幣と労働支出と交換し、資本支出(原材料代や減耗固定資産、費用等)を投下して結合させ、目的生産物を生産して貨幣と交換することで、次回生産を即ち生産継続を可能にするものである。

最終生産物は生産活動の目的であり、生産活動自体の継続の保証でもある。最終生産物を作り続けなければ生産活動自体が停止する関係だ。

それはこの場合で言えば漁業活動の停止であり食糧入手の停止につながる。最終生産物、は単に最終生産物ではないのである。

 

・最終生産物を貨幣(尺度)と交換する場合は、生産で発生した労働支出と資本支出が所得であるが、交換価格には、資本支出のうち原料費や交換作業手数料(運輸、商業経費)も上乗せされるが、これらも中間生産に対する中間消費費として分配され、中間再生産活動もそれ自体として継続されるわけである。

 

ロビンソンで言えば、素潜り漁から、小船を使った投網漁で大量短時間漁業が可能になるが、漁業労働支出直接ではなく、資本支出即ち、網と小船の減耗分の生産が分業により労働支出、資本支出され続けていて、交換活動によりそれぞれの生産部門に補充が行き渡り、社会的生産活動が継続して、経済社会が維持されているわけである。

継続的単純再生産活動、とはこのことであり、社会はこの経済活動が基本である。