経済を考える6-7

原前払い、年前払い、資本について考えよう。

 

ロビンソンクルーソーは、食糧の魚をとるのに泳いで、木を削ったモリでとっていたが、熟練して最低限の確保ができ、時間の余裕ができたので、網を使ったり船を作ったりしてより短時間で同量以上の魚をとることができるようになる。労働の成果として、又は目的の為の直接労働以外の有効労働が、資本財を生み、生産力を飛躍的に伸ばし、更に別の有効労働の労働時間を生み出す。これが豊かになる工程である。

 

ケネーの生産階級も、もとは不生産階級だったはずで、その時期は循環経済が成立するまで人口減となり、ある水準までそれが続くが、その時代は本来的には支配階級は存在し得ないはず。

しかし現実は支配階級がいて、人口減が加速されながら、採取経済や略奪型の戦争に依存して人口減を食い止めようとしたのではないか。そもそも食い止めようとしていたかどうか自体が疑問だが。そのような村は壊滅し、ゼロサム世界とはいえ、生き残った村が生産階級化に挑戦する権利を獲得したと考えた方が自然だ。

 

話を戻して、生産階級労働が農場の生産労働だけでなく、余剰時間で農地改良したり、開墾したり、水利環境を改善する土木工事をやったり、凶作時備蓄食糧倉庫を作ったり、そこに備蓄食糧をためたり、農機具を改良したりと原前払即ち固定資本というか、償却資産を直接にか、余剰生産物の交換の為の外部委託でか、得る。

これらは、年前払いのような生産時に失われて新たなものが生産される種もみなどの原料や、新生産物に変化させる為の労働を裏付けるエネルギー源の食糧などの中間消費資本とは区別される減価償却する資本財である。

豊作時に年前払や原前払に余剰生産物を投資しておけば、長期の生産増が期待でき、この生産増の恵みを前払に活用できるか否かがポイントとなる。

余談だが、日本は公共性、戦略性がなく、バブルでチャンスを一旦消し去ったが。

 

人間に有用な需要物を、固定資本を減耗させながら原料を商品に変える労働を賃金で労働者にやらせるのが資本主義だが、一方で経営からミクロに見れば、労賃部分を償却資産の固定資本に置き換えて生産性が上がるなら、首を切り、単純労働を人に担わせて固定資産の減耗が賃金より低いならば、置き換えることになる。一方で機械などの償却資産自体が人間労働と機械と原料で生産されるので、その人間の再生産費用を含む製造経費がローコストでなくてはならない。その機械を生み出す労働にも再生産費用が必要である。

ここで、資本とは何か、だ。資本とは、再生産循環経済を可能にし、拡大する資源であり、余剰生産物から発生する、ということだ。余剰生産物は、偶然の気候変動による豊作や、労働によって得た生産物の消費節約により捻出される。偶然はプラスもあればマイナスもあるから、熟練による労働時間の短縮による余剰労働時間の捻出か、長続きしないが苦痛伴なう労働強度を上げて時間を捻出するか、労働時間を伸ばして捻出するか、何れにせよ労働で余剰労働時間が捻出できれば、年前払や原前払が得られて加速できる。生産階級にあっては、生産道具としての償却資産としての固定資産、労働力、原材料であり、固定資産を10償却しながら、生産物を食べさせて消費しながら労働させて、種や一年分の収穫に必要で消費する(中間消費)20で、計30を中間消費して50の生産物を得ている。

資本Gが貨幣なら、一旦、商品Wにして、すなわち原材料と労賃の20と固定資産減耗10にして、50の生産物を得る。ここで気になるのは労賃と固定資産減耗、すなわち何年も使える道具と人間労働との関係性だ。

マルクスは、商品Wを可変資本Aと不変資本Pmとに分類して生産工程Pにより、Wダッシュを得るが、生産物のダッシュ部分が剰余価値であり、拡大した資本Gダッシュのダッシュ部分としている。

人間労働を機械労働に置き換えて生産性は上がるが、平く言えば、生産に直接かかわる労働者を間接的な機械生産労働者に解雇採用することで、マクロ的な社会全体としては、より生産力が上がる。

大型機械を1時間操作して得られる生産物量と、手作業だけに依存して1時間かけて得られる生産物量は自ずと異なる。パワーショベルを1時間操作するのと、シャベルで1時間穴掘り作業するのとの差だ。

労働単独とシャベルの減価償却が費用であり、投下資本Gである。大型機械の減価償却と労働が前者の費用である。労働力や原料が20という年前払に統合され、大型機械にあたる100のうちの減価償却が10として組み合わせて生産しているのがケネーの範式だ。

ここで、資本とは、年前払の原材料と労働力、原前払は生産に関わる減耗する固定資産、この総和が貨幣のかたちであろうと、商品材料の形をとろうと資本である。貨幣資本、商品資本と使い分けできるが。いづれも、起源は労働の余剰生産物により得られたものの変形である。

仮に20の年前払の構成を5の原料と15の農民の人件費、とした場合や、その逆や、原前払を20、年前払を10とした場合などの組合せを6-9で検討してみたい。