経済を考える6-5

ケネーの範式の不生産階級の成長の考察が、資本主義化への洞察を生み、資本主義発展後の社会を模索する上でも手法は同じ気がする。

 

不生産階級の質と量の拡大の前に、農本社会の価値観を考えよう。それは余剰生産物を増やしたい支配階級の思いであり、安定して豊かになりたいのである。いつの時代も同じですね。

その解決の道は、開墾と戦争による生産基盤即ち領地の拡大と擁護。水産資源がないなら農地は絶対的で国境を内陸で接するならば、紛争を作るのは簡単。農民にとっては税金が安ければ誰が支配階級でも良い。この領地戦争は、世界マクロではゼロサムでしかないが、支配階級にとってはオールオアナッシング。死活をかけた戦いに、常設の軍と内政を抑える官僚機構の維持は絶対的。

戦争は総力戦となり、人口は農民が圧倒的に多いから、兵士は農民の力を借りなければならない。農民のほとんどを徴兵すると、農業生産が落ちてしまう。したがって内職労働時間分を農業専業労働時間に絞らせ、また農閑期の農民から徴兵する。

また、大量な武装、刀、やり、盾、弓、馬具、場合によって、食料から戦場携行必需品の需要が生まれ、かつ農家での兼業的内職的作業は専業化される。そして、短期の利益率とは無関係な需要が生まれるのだ。生活物資や支配階級の贅沢需要も劣後となる。このことは、農業を維持しながら戦争し、戦勝すれば回収できる信用での負債による不生産階級の発展をもたらす。銀行もその一つ。そしてその後は重税が待っているが。

要は富国強兵、がキーワード。

しかし、国境を内陸に接した領地戦争は激しい破壊と農民人口減をもたらす。その意味では海洋国は、戦火から守られ、海に隔てられた補給廠、生産補充基地としての地の利があり、また、後進国に市場や資源原料、奴隷の補充を求めることになるから、勢い造船業や鉄鋼業発展の地政学的優位性が備わる。

こうして、農業生産力が乏しくても、不生産階級を国策として育成し、地の利を生かして工業生産力を育成し、造船と軍艦による制海権を確保して通商を活発化させ、大量の原料輸入で大量生産し、戦時は補給廠として、平時は交易として、貿易に足る生産工場が需要の独り占めででき、そこで資本主義が花開くのではないだろうか。これが、資本主義の最先端を行ったイギリスの推察だ。